マンションライフを楽しむMANSION LIFE
2020.07.30
いいことずくめ!?「リビング学習」のススメ
近年、注目が集まりつつあった「リビング・ダイニング学習(以下リビング学習)」。社会情勢の影響を受け、学齢期の子どもを持つご家庭における学習スペースの確保は、大きな命題となっています。スペースが限られたマンションだからこそ活用したい、リビング・ダイニング学習のコツを、子育て経験のある専門へうかがいました。
【取材先】
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 所長
管理建築士 井上 恵子 さん
保育園の設計・工事監理、生活・住宅情報サイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナー講師などを務める。「代沢ききょう保育園」で第12回キッズデザイン賞受賞(2018年)。日本女子大学非常勤講師
http://atelier-sumai.jp/
「リビング学習」のメリットとは?
最近では、小学校入学時にこども部屋を作り、学習デスクを購入するのではなく、リビングにこどもの荷物置き場を作り、学習もリビングで行うという家庭が増えているそうです。まずは、話題の「リビング学習」について、そのメリットをご紹介します。
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大物家具の購入が不要に
小学校入学時が近づくと、こども部屋を作り、学習デスクを購入するイメージがありますが最近はそうでもないようです。その代わり、ランドセルや教科書といった学習用品や本を収納するスペースは、きちんと確保してあげることがポイントに。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所所長で管理建築士の井上さんは、自身の体験も交えて次のように言います。「小学校に上がるタイミングでこども二人にいわゆる学習机を買い与えましたが、二人ともほぼ使いませんでした。中学に上がるくらいまでの学習には、ダイニングテーブルやリビングに置いたシンプルなパソコンデスクで十分。但し、リビングにモノが氾濫しないように、ランドセルや教科書置き場、本棚といった収納アイテムは必要だと思います」 -
「人の気配」が集中力UPのカギ
昨今のテレワークで実感した方も多いかもしれませんが、完全な無音状態だと神経が過敏になり、かえって集中できない場合があります。大人でもこどもでも、人の気配があると少しの緊張感と安心感を伴い、集中しやすいようです。
小学生のうちは、一人でいることに不安を感じやすいため、個室では学習に対する集中力が低下することがあります。そういった際にも、リビング学習であれば安心して取り組めます。
井上さん宅でも、小学生のうちはリビング学習、大きくなっても「人の目がある環境の方が集中できる」と、あえてリビングで受験勉強をすることもあったそうです。
大きくなってからは「ダイニングだと(家事をしている)親との距離が近すぎるので、リビングテーブルで距離を保ちながらやるようにしていました。(テレワークのように)親も近くで仕事をしていれば、お互いさぼらないように意識しあって効果が上がるかもしれませんね」(井上さん) -
忙しい親でもこどもの学習習慣をしっかりつけることができる
勉強でわからないところがあってもすぐ親に尋ねることができたり、親がこどもに勉強を教えたりできることも、「リビング学習」メリットのひとつ。親子が一緒にいられる機会が多くなり、コミュニケーションが増えることで、お互いのきずなも深まっていくと考えられます。
「中学受験成功には母親の関わりが大きいと言われ、リビング学習を取り入れるご家庭が多いのも事実です。しかし、受験をしないご家庭でも、親の目が届く所で宿題などに取り組ませることで、日々の学習習慣をしっかりつけることができます。共働きなどで忙しいご家庭でも、家事と並行して、こどもの学習をサポートできます」(井上さん)
リビングに学習スペースを作るコツ
リビング学習には家族の理解と環境整備が重要です。こどもが効果的にリビング学習を進められるよう、環境を整えてあげるにはどうしたらいいのでしょうか。
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テーブルは兼用家具の活用を
まずリビング学習に必要なのは、学習をする際に適切な姿勢を保てるテーブルと椅子だと井上さんは言います。リビング・ダイニングの面積に余裕がある場合は、対面キッチンにカウンターデスクを付けると、家事をしながらでも目が届きやすくなります。また、役割を兼用できる家具の導入について、提案くださいました。
「マンションでは、リビングセットとダイニングセット、学習テーブルを全て入れるのが難しい場合もありますね。その場合は思い切って大きなダイニングセットを導入し、学習と団らんスペースを兼ねてしまうのもオススメです」(井上さん)
長く座っても疲れにくいソファと、食事をとりやすい高さのテーブルがセットになったソファダイニングだと、リビングとダイニングに別のテーブルセットを置かずにすみます。また、必要に応じて高さを変えられるテーブルにすると、多目的に使い分けられます。
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勉強道具の収納棚は「使う場所のそば」が鉄則
リビングが散らからないためにも、必ず必要なのがこども用の学習アイテムを収納するスペース。自分専用の収納スペースを持ち自分で管理することで、自主性を伸ばすこともできるようです。
「学習用のアイテムは、使う場所のそばにしまうのが鉄則。ランドセルラックでもいいのですが、収納したものの中身が見えてしまう点が気になります。引き出し・扉がついている収納棚だと、リビングにあっても見た目を邪魔しません。これから入居される方であれば、壁面収納棚でテレビボードとこども用の収納スペースを作ってしまうのもオススメです」(井上さん)
リビング学習でデメリットとして挙げられることが多い「収納」の問題。使いやすい収納場所を学習スペースの近くに用意することで、こども自身に片づけの習慣を身につけるいいチャンスにもなりますね。
モノだけじゃない! 最適な環境づくりのポイント
リビング学習の効果を上げるには、家族全体の生活スタイルを見直すことも重要です。そのポイントについてご紹介します。
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タイムマネジメント
学習時間の設定など、目の届かないこども部屋では管理できません。また、テレビやスマホ、ゲームとの付き合い方なども、小さいうちに身につけておきたいもの。リビング学習なら、親が適切な声かけなどをすることで、時間の管理の仕方を身につけさせることができます。
「リビング学習には、親にも我慢が必要です。家族間で時間を区切る意識を共有しましょう。壁面を黒板・ホワイトボードにしてスケジュールを見える化してもいいですね」(井上さん) -
家族の過ごし方
学習時間には家族もテレビを見ないようにする、イヤホンをしてみるなど、こどもの集中力をそがない工夫をしましょう。
「リビングにテレビがあるのはいいのですが、こどもの学習時間は見ない、と決めるなど、こどもに寄り添う姿勢を見せましょう」 -
適切なフォロー
親による声かけの内容で、こどものやる気にも影響が。こどもが勉強を好きになるように適切な声かけを心がけましょう。
「お父さんがそばで新聞を読んでいて、分からないところを聞かれたら答えてあげるのもいいですね。コミュニケーションの機会が少なくなりがちな父親と、話す機会が増えます」(井上さん)
スペースが限られたマンションだからこそ活用したいリビング学習。また、リビング学習スペースは、大人のテレワークスペースとしても役立ちます。家族みんなが住みやすく、働きやすく、学びやすい家へ。この機会に検討してみてはいかがでしょうか?