プロに聞く!暮らしと住まいの成功術PROFESSIONAL
2021.12.16
ノンアルコールカクテルで特別なひと時を過ごしてみよう
「モクテル」という名前でも知られるようになり、専門店も登場するなど、知名度が上がってきたノンアルコールカクテル。目でも味でも楽しめるノンアルコールカクテルで、お酒好きの方も苦手な方も、おうち時間を楽しんではいかがでしょうか?
【取材先】
バーテンダー 高橋弘晃さん
日本発のモクテル&低アルコールカクテル専門店Low-Non-Bar(ローノンバー)」店長を務める。お酒を飲まない人、飲む人両方が楽しめるバーをコンセプトに、ロー&ノンアルコールの魅力を発信し続けている。
今流行の「ノンアルカクテル」とは?
近年、若者のアルコール離れや食生活の多様化などの影響で、イギリスなどを中心に世界的なアルコールフリーやローアルコールといったジャンルの飲料が注目されています。オルタナティブアルコール飲料(お酒の代わりに飲めるノンアルコール飲料)とも呼ばれるこれらの飲み物、「ソフトドリンクとの違いは?」「おうちで楽しむテクニックは?」など、疑問を感じる方も多いかもしれませんね。そこで、ノンアルコールカクテルの基本の「キ」を、日本初のモクテル専門店店長の高橋弘晃さんに伺いました。
意外と長い「ノンアルカクテル」の歴史
ノンアルコールカクテルが広まったきっかけは、禁酒法。1920~30年代のアメリカで、お酒の代わりに楽しめる飲み物として世に広まったのだそうです。
「禁酒法廃止後、お酒が飲めない子供でも、大人と一緒に飲めるようにと、ザクロシロップにジンジャーエールを合わせたノンアルコールカクテルが作られました。当時の有名な子役スターにちなんで『シャーリー・テンプル』と名付けられ、モクテルが世に広まる一つのきっかけになりました」(高橋さん)
コロナ禍で高まるノンアル需要
海外では健康志向の広まりや宗教、体質などの問題が絡んで、「ソバーキュリアス(Sober Curious)」【Sober =素面(しらふ)、Curious=~したがる】という概念が浸透してきたそう。これは「体質的にはお酒を飲めるけれども、飲まないことを選択する」というスタイルのこと。もともとお酒を飲めない・飲みたくない人が多いというデータがある日本でも、コロナの流行でお酒を飲む機会が減り、海外のトレンドに敏感な人々の影響で「ソバーキュリアス」な人が増えたと言います。
これまでもお酒を飲めない人が来店された際にノンアルコールカクテルを作っていましたが、ノンアルコール専業として開店した2020年3月からは、より凝ったものを作るようになったそう。
「バーの良さってお酒を飲むだけじゃないと思うんです。誰かともう少し話したい、とか、恋人ともっと一緒にいたいとか──お酒を味わえないとそれができないというのはもったいないなと思ったんです」
ノンアルコールカクテルとソフトドリンクの違いは「心を癒すかどうか」
ノンアルコールカクテルの魅力は、「酔わないこと」。車を運転しても、飲んだ後に予定があったとしても、酔わないので問題はありません。時間やシチュエーションを問わず、お酒を飲む時に味わう贅沢な時間が過ごせるのが魅力だそうです。
ソフトドリンクとノンアルコールカクテルの違いは、 「 『体の渇き』をいやすか、『心の渇き』をいやすか」だと、高橋さん。着物に着替え、茶室で抹茶をいただくのと、のどが渇いたと言ってペットボトルのお茶を飲むのとが違うように、ノンアルコールカクテルには贅沢で知的好奇心や心が満たされる場所で味わう「嗜好品」の側面があると言います。
「お酒を飲む人を対象にした実験で、お酒を飲んだ状態とノンアルコールカクテルを飲んだ状態のリラックス度を比較するものがあります。結果は、ノンアルコールカクテルの方がよりリラックスした状態になるという結果が出たそうです」(高橋さん)
本当に心を満たし癒すには、ノンアルコールカクテルを楽しむ余裕を持つのが、いいのかもしれません。
おうち時間とノンアルコールカクテル
最近ではビールやワイン、缶チューハイなどにもノンアルコールが登場し、ノンアルコールの選択肢が増えています。コロナ禍で在宅時間が増えたのをきっかけに、おうち時間を楽しむ方法として、ノンアルコールのバリエーションも広がっているようです。
"混ぜる"という「カクテル」本来の意味を忠実に捉え、ノンアルコールカクテルの楽しみ方をご紹介します。
ノンアルコールカクテルの肝は「ストーリー」と「味の重なり」
「例えば、オレンジジュースを飲むのでも、パックからグラスに入れただけではソフトドリンク。でも、誰かのために裏庭で育てたとれたてのオレンジを絞って出したら、それはソフトドリンクではないと思うんです。"飲み物が提供された背景も含めて楽しめるもの"、それがノンアルコールカクテルです」(高橋さん)
味や香りだけではなく、その背景に潜むストーリーまで丸ごと味わうのも、ノンアルコールカクテルの大切な要素になってくると言います。
「味の重なり、複雑さも大事にしています。例えば、オレンジジュースにラベンダーやあぶったローズマリーを添えるだけでも香りが楽しめますし、気分が変わってきます」(高橋さん)
「非日常」の演出が大事
高橋さんによると、家庭でノンアルコールカクテルを楽しむには「嗜好品としての存在価値」が大事だそうです。結婚祝いでもらって以来タンスの肥やしになっているシャンパングラスを出してきて使ってみたり、花を添えてみたり、照明や音楽など部屋の雰囲気をよくするなど、「非日常」を演出する工夫をしてみましょう。
「ノンアルコールカクテルは昼間も楽しめるので、窓を開けて花を用意して、音楽をかけながらノンアルコールスパークリングワインとかもいいですね。音楽もピアノジャズとかラテンミュージックなど、元気なものを選びたいですね」(高橋さん)
上手に季節感を取り入れよう
また、季節のフルーツとイベントを掛け合わせるのもコツの一つ。フルーツやハーブなど季節のものを取り入れると、手軽に「非日常」を演出でき、簡単なわりに上級者に見えるそうです。
「これからの季節なら『クリスマス』。海外だと、オレンジにシナモンやクローブといった香辛料を合わせるとクリスマスの香りになります。日本の春における桜のような(象徴的な)イメージですね」 (高橋さん)
食事にも合うノンアルコールカクテル
レストランの前菜ではカルパッチョやサラダなどフレッシュな食材が並び、酸味を感じられるノンアルコールカクテルがぴったりだそうです。
「トマトをブレンダーでつぶして濾したものとノンアルコールのスパークリングを合わせてシャンパングラスに入れれば、フレーバーのあるノンアルコールスパークリングワインになります。ノンアルコールのスパークリングがなければ、トニックウォーターでもOKです」(高橋さん)
メインの肉料理や魚料理には、料理の邪魔をしないお茶(紅茶・緑茶)やノンアルコールワインを添えるのが高橋さんのオススメだそう。
おすすめノンアルコールカクテル レシピ3選
ノンアルコールの中でもカクテルは、「似た」という意味の「モック」と「カクテル」を掛けて「モクテル」の名でも知られています。本格的なカクテルというと専門のバーなどで楽しむイメージですが、モクテルならご家庭にある材料で気軽に挑戦することも可能なんです。
シロップやフルーツの使い方次第で、リゾート気分満点の一杯を味わうことも夢ではない「おうちモクテル」の世界。今回は高橋さんにおすすめレシピを教えていただきました。
■基本のジントニック
ノンアルコールジン(ジンに使われるスパイスやハーブの香りを移したアロマウォーター)を使った基本のカクテルです。
【用意するもの】
・グラス ・ノンアルコールジン
・トニックウォーター ・ライムorレモン
【作り方】
1. グラスに氷を隙間なく入れます。
2. グラスにノンアルコールジンを注ぎ、軽く攪拌して氷に馴染ませます。
(液体に温度差があると混ざりにくくなるため)
3. ライムorレモンを絞ります。※果実はまだグラスに入れない。
4.氷になるべく当てず、グラスの側面に沿うようなイメージで、トニックウォーターを注ぎます。(炭酸が抜けすぎるのを防げます)
5. 氷を縦に軽く持ち上げて混ぜます。
6. 果実の皮の表面を少しタオルなどで拭いてから、グラスにいれます。
7. 最後に香りが広がるように、氷の上に少しノンアコールジンを垂らします。
食事に合わせるならお茶ベースがオススメ
【用意するもの】
・グラス ・紅茶か緑茶
・ベリー類 ・柑橘類
【作り方】
1. 好みのお茶を水出しで入れる。
2. ラズベリーやブルーベリー等を入れて一晩置きます。
3. 柑橘類の絞り汁やハーブをお好みで入れて香り付けしたら完成です。
おうちモクテルを盛り上げるシロップを作ろう
モクテルを美味しく作るには「シロップ」がポイント。スーパーで買える材料でBarの味を再現してみましょう。
■スパイシージンジャーシロップ
おうちにあるソフトドリンクやノンアルコールドリンクに入れるだけで簡単にモクテルが作れます。ヨーグルトにかけたり、みりんや砂糖の代わりに生姜焼きのタレに入れる方法もおすすめです。
【用意するもの】
・しょうが(できれば国産) 200g ・さとうきび由来の砂糖 300g
・水 400ml ・クローブ 3粒 ・シナモン 1本
・ナツメグ 粉で2つまみ ・唐辛子 1~2本
※スパイスはパウダー状を大体の目安で入れてもOK
【作り方】
1. ショウガを薄切りにします。
2. ショウガに砂糖を加え、まんべんなく混ぜて、1時間ほど置きます。
3. 2とその他の材料を鍋に入れ、強火→沸騰したら弱火にして煮込みます。最初に出るアクは取り除き、後半に出てくるアクはうまみもあるのでそのままで。
4. 30分~40分煮込んだら、味を確認。水分量が500g程度に減ったら完成の目安です。
5. 好みの味になったら鍋ごと氷水でシロップを冷やし、粗熱が取れたらザルでショウガやスパイスを濾して、完成です。
※冷蔵庫で1か月程度を目安に使い切りましょう。
■皮ごとレモンシロップ
ソーダ割にするだけでモクテルが作れるシロップです。モクテルだけでなく、ヨーグルトやパンケーキにかけると、はちみつなどとは一味違うさわやかな甘みが感じられます。
【用意するもの】
・レモン 3個
・グラニュー糖 約80g(レモンジュースと同量)
・(お好みで)ハーブ類 適量
【作り方】
1. レモンを洗い、ピーラーで皮をむき白いワタを取り除きます。
2. 絞り器で果実を絞り、茶こしで種と果汁に分けます。
3. 取れた果汁の重さをはかり、同量のグラニュー糖を計量します。
4. 鍋に1、3、4を入れて弱火にかけ、焦げ付かないようゆっくりと温めます。
※お好みでローズマリーなどのハーブを入れても。
5. 砂糖が溶けきったら粗熱を取り、ザルで皮などを濾して完成です。
※冷蔵庫で2~3週間程度を目安に使い切りましょう。
今回は、おうちで本格的なモクテルを楽しむための知識やテクニックをご紹介しました。寒くなっておうちで過ごす時間も長くなるこの季節、クリスマス気分を楽しみながら、家族でおうち時間を盛り上げるモクテルタイムを楽しんでみてはいかがでしょうか?そして時には、Barへ足を運んで本格的なモクテルも堪能してみたいものですね。