マンションライフを楽しむMANSION LIFE
2022.11.24
伝統的だけど新しい!日本茶で心も体も元気に
集中したいとき、リラックスしたいとき、疲れを取りたいときなど、飲み物で気分をリフレッシュするという方も多いのではないでしょうか?コロナ禍でのおうち時間増加によって、自宅でリーフ茶を楽しむ方も増えたようです。
特に最近注目されているのが「日本茶」。毎日をより豊かに楽しむために、改めて「日本茶」の魅力を感じてみませんか?
【取材先】
日本茶インストラクター :坂上克仁さん
群馬県の旅館で勤務後、(株)龍名館(東京都)に入社。日本茶レストラン「レストラン1899お茶の水」のスタッフを振り出しに、かねてから興味があった和の文化への理解を深めながら、お茶という切り口から和の文化を発信し続けている。現在は、「レストラン1899お茶の水」と日本茶カフェ「チャヤ1899東京」の2店舗のドリンク開発を統括する責任者を務める。
HP: https://1899.jp/
一番身近なようで、そうでもない?奥深い「日本茶」の世界
慌ただしい生活の中で、ホッとリラックスするひと時を演出してくれる一杯のお茶。中でも日本茶は、ここ数年で新しい飲み方や楽しみ方が積極的に提案され、大きな変革期を迎えています。
日本人の生活に一番身近なようでいて、意外と知らないことも多い「日本茶」の魅力とは?今回は日本茶インストラクターとして活躍する坂上克仁さんに、実は奥深い日本茶の世界と楽しみ方についてお話を伺いました。
緑茶・紅茶・ウーロン茶──様々なお茶の共通点と違いとは?
ご存じの方も多いかもしれませんが、緑茶も紅茶もウーロン茶も、すべて同じ種類の茶葉からできています。植物学名は「カメリア・シネンシス」。違いは、葉を摘んだ後の加工方法で、茶葉を発酵させるかさせないかが一番大きな違いなんだそうです。
「同じ原料から作られるので、緑茶も紅茶もカフェインやカテキンなど、身体に影響する成分はほぼ同じですが、含まれている成分の割合にそれぞれの特徴があります。例えば、緑茶にはカフェインが含まれていますが、カフェインによる覚醒(興奮)作用をやわらげるテアニンが含まれており、リラックス状態につながりやすいというメリットがあります。紅茶にはカテキンが変化したテアフラビンなどが多く含まれ、抗菌や抗酸化作用に期待ができます。」(坂上さん)
「日本茶」ならではの魅力とは?
同じ茶葉や成分など共通する面も多い、緑茶・紅茶・ウーロン茶。道具の違いなどによってさまざまな淹れ方がありますが、基本的に「熱いお湯」を使うというのが共通ルール。とりわけ緑茶には独特の楽しみ方がある、と坂上さん。
「一言で"日本茶"と言っても種類は様々。一番身近なものでも煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶……とたくさんの種類があります。そしてそれらの種類とお湯の温度との組み合わせで、出汁のようなうま味を感じる淹れ方、シャキッと気が引き締まる淹れ方など、飲む方の好みやシチュエーションに合わせたお茶を淹れることができるんです。 "おもてなし"の心や"思いやり"といった日本の文化を、お茶を通して表現できる点は大きな魅力ではないでしょうか」(坂上さん)
こんなにある!「日本茶」の種類
おなじみの煎茶に抹茶、ほうじ茶、最近注目の和紅茶と種類豊富な日本茶。同じ「日本茶」と呼ばれ、同じ茶葉から作られていても、味わいや香りは全く違うようです。では、どんなタイミングでどの日本茶を飲めばいいのでしょうか。お茶の効能と淹れ方の関係について教えていただきました。
緑色の煎茶だけではない、さまざまな「日本茶」
緑茶・紅茶・ウーロン茶となるお茶の木(カメリア・シネンシス)の中でも、日本で多く栽培されているのは、ヤブキタ種という種類。それが、栽培方法の違いや、発酵の有無・加熱方法の違いなどでさまざまな味の変化を生み出すのだそうです(下図参照)。
薄い緑色の「煎茶」だけでなく、茶葉を砕いて粉末にした抹茶や、お茶に玄米をブレンドした玄米茶などの再加工茶まで、日本茶には10種類近いバリエーションがあります。最近よく聞かれる「和紅茶」も、日本で育てたカメリア・シネンシスの茶葉を発酵して作ったものですから、日本茶の仲間になります。
ただ、麦茶やそば茶も"お茶"と呼ばれてはいますが、これらは茶葉を使っていないので"日本茶"ではないのだそうです。「お茶」の世界は知れば知るほど奥深いですね。
日本茶の分類図
茶葉の違い×淹れ方で様々な味わいを
栽培法・製法によって名前の異なる日本茶。味わいだけでなく、含まれる成分も変わってきます。
【日本茶の主成分】
・カテキン:緑茶の渋み・苦みの主成分。血中コレステロール値の低下へ影響、体脂肪低下作用、抗酸化作用、虫歯予防、抗菌作用がある。70℃以上のお湯で、よく溶け出す。
・カフェイン:苦みに影響。覚醒・興奮作用、利尿作用がある。70℃以上のお湯で、よく溶け出す。
・テアニン(アミノ酸):うまみに影響するアミノ酸。日本茶に含まれるアミノ酸の半分以上を占める。興奮抑制作用があり、カフェインの興奮作用を穏やかにする。75℃を越えるとカフェインの方が溶出度が増える。85℃を越えるとカテキンの溶出度の方が増える。
・ビタミン:緑茶のみ含まれており、特に煎茶にはビタミンCが多く含まれている。
「日本茶は使うお湯の温度が高いほど、茶葉に含まれる苦みや渋みの成分が溶出されたり、香りを引き立たせることができます。反対に低い温度の場合はうまみを感じやすいお茶を淹れることができます。成分の溶出されやすい温度を理解しておくと、香りや味を好みに合わせて調整できます」(坂上さん)
例えば、煎茶は日本茶の主成分であるテアニン、カテキン、カフェインの成分バランスがよいので、眼ざめの一杯にピッタリ。毎朝同じ量の茶葉を同じお湯で淹れて飲むと、感じる味の変化で体調の違いまで把握できるのだとか。
「昼食、夕食など食事と一緒に飲むならば、お茶の存在感が強すぎないものがいいですね。同じ種類のお茶でも、茶葉の量・お湯の量・浸出時間・温度を調整することで、さっぱり目にすることができます。例えば、茶葉を少なめにして、温度低めのお湯で浸出時間を短めにすると、食事の味を邪魔しないお茶になります。パン食のときは香りと渋みの強い和紅茶でお口をさっぱりさせてもいいですね。 」(坂上さん)
パン食に合わせるか、米食に合わせるかなど、食事とのバランスを考えて、淹れ方を調節し楽しめるのも日本茶の魅力の一つ。また、頭をシャキッとさせたい午後のティータイムにはカフェインが強めの抹茶を、就寝前のカフェインを抑えたいときには再加工茶の玄米茶やほうじ茶を……など、1日の中でもシチュエーションや体調などに合わせてお茶と淹れ方を工夫すると、楽しみ方はまさに無限大。
「新しいお茶を飲むときは、まずはパッケージに書いてあるお薦めの淹れ方に従ってみましょう。そこから茶葉の量・お湯の量・浸出時間・温度の4つの要素を調節して、お好みの味を探っていくといいですよ」(坂上さん)
「日本茶」をより身近に楽しむために
同じお茶でも道具や淹れ方にこだわると、より味わい深く楽しめるもの。とはいえ、あまり面倒でも長続きしませんよね。そこで、生活の中でより気軽に「日本茶」の魅力を体感できる工夫について伺いました。
おうち時間に「日本茶」を楽しむコツ
実は自宅にティーポットや急須がなくて、お茶はもっぱらティーバッグという方も多いのではないでしょうか?しかし、一家に一つのティーポットや急須を用意していただくと、日本茶の楽しみ方が増えていきます。
「ご自宅用に購入を検討されるのであれば、日本茶用の急須(写真下)がお薦めです。日本茶の茶葉は製造工程で細かくなることが多く、紅茶用ティーポットでは茶こしをすり抜けてしまいます。日本茶用の急須であれば茶こしの目が細かいので、紅茶に使っても日本茶に使っても、きちんと茶葉を濾し取って、おいしく召し上がっていただけます」(坂上さん)
また、陶器はお茶を淹れるたびに成分が吸着されてしまうので、磁器やガラス製の方が汎用性が高いそう。
「容量や持ち手の位置、素材、デザイン性など、さまざまなこだわりポイントがあります。人それぞれ基準は変わってくるので、どの要素を優先したいか、あらかじめ考えていただくといいのではないでしょうか」(坂上さん)
もっと気軽に楽しもう
最近ではペットボトルのお茶も種類が増えて味・香り・保健機能を楽しめるようになってきています。せっかくこだわるなら出先でも自分好みの日本茶を楽しみたい方には、茶こしつきボトル(フィルターインボトル)がお薦めです。ボトルのキャップ部分に茶こしがついているので、お好きな量の茶葉とお湯や水を入れるだけで、いつでもどこでもマイ日本茶が楽しめます。フィルターインボトルにはご自宅用の大容量タイプもあるので、夏場などはまとめて作って冷蔵庫に入れておくと、いつでも冷たい緑茶を味わえますね。
「お茶っ葉を入れっぱなしにすると、溶出が進んで味が変わってしまいます。フィルターインボトルを使う場合も、好みの濃さになったら茶葉を引き上げてください」(坂上さん)
手軽に楽しめるとはいえ、ベストな状態で楽しむには気遣いも必要なようです。皆さんも、さまざまな種類の日本茶、そして淹れ方に挑戦して、自分好みの一杯を探してみてはいかがでしょうか?
今回は日常生活をより豊かに楽しむためのヒントをお届けしました。上手に日本茶を生活に取り入れて、より健康的でリラックスしたマンションライフを楽しんでくださいね。